フィリピン医学留学Diary

フィリピン医学留学での様々な出来事を綴ります。

フィリピンの医学部を卒業してアメリカで働けるのか2

 この記事は「フィリピンの医学部を卒業してアメリカで働けるのか」の続きです。幾つかコメントを頂いたのを加味してまとめると、日本の医師免許を取得した上でなら可能ですが、フィリピンから直接卒業後アメリカで臨床をするのは難しいのではないかということでした。それは法律上やUSMLEの壁また、それに伴う労力の大きさ等が主な原因として挙げられるようです。詳しくは、前回の記事を参照してください。

さて今回はデータを参照しながら、もう少し地に足の着いた話をします。2014年度と2016年度の両方でThe MATCH national resident matching programという団体がアメリカでresidencyまたはfellowshipを応募したIMG(international medical graduates)の調査結果を発表しています。そのデータに目を通した個人的な感想を簡潔にまとめます。

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まずフィリピンの医学部を卒業し、アメリカの臨床に挑戦している人数を見てみましょう。生憎、2016年度はNone-U.S. IMGsの国籍の調査が含まれていなかったようなので、少し古い2014年度のデータを参照します。これによると、2014年にフィリピンの医学部を卒業して、応募した人数(アメリカ人除く)は137人でした。その中でmatching成功したのは52人です。この137人はフィリピンの医学部を卒業したフィリピン人が大多数を占めるかと思われます。さらに、他のデータからnone U.S. IMGsの場合、マッチングに成功するのは卒業後平均して5年ということなので、この137人のフィリピン人のほぼ全員はフィリピンで医師免許を取り、研修も終えていると予想されます。

 

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さて、次は国籍別に見ていきます。これも2014年度のデータしかないのでこちらを参照しますと、2014年度に応募したフィリピン人は134人でした。フィリピン人の大多数が自国の医学部に通うのが一般的なので、ここではフィリピン人全員がフィリピンの医学部を卒業したと仮定します。すると、フィリピンの医学部を卒業したフィリピン人以外のIMGがアメリカ臨床に応募した人数はたったの3人ということになります。

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数が少ないのは、フィリピンの医学部を卒業する非フィリピン人が少ないのと、さらにそこからアメリカに渡ろうとする人が少ないので、可能性の是非については何も断言できません。そして、残念ながらこの3人の詳細はわかりません。しかし、もし彼らがマッチングに成功していたと仮定し、none-U.S.IMGsのマッチングまでの平均年数を考慮すると、この3人はフィリピンの医学部を卒業した後、フィリピン若しくは出身国で医師として働いていたと推測する方が妥当かと思われます。したがって、フィリピンの医学部を卒業後、免許や臨床経験無しでUSMLEのスコアのみでマッチングに成功すると見込むのはこの2014年度のデータからは少し非現実的のような印象を受けます。

 

*追記、上記はあくまでも一般的なマッチングの方法でアメリカに渡る際の話であって、アメリカにコネクションがある場合や他に特別な技能がある場合には話は変わる可能性があると聞いています。

 

参照

http://www.nrmp.org/wp-content/uploads/2014/01/NRMP-and-ECFMG-Publish-Charting-Outcomes-in-the-Match-for-International-Medical-Graduates-Revised.PDF-File.pdf

 

http://www.nrmp.org/wp-content/uploads/2016/09/Charting-Outcomes-IMGs-2016.pdf