フィリピン医学留学Diary

フィリピン医学留学での様々な出来事を綴ります。

フィリピン医学部の進級はどのくらい難しいか

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入学は比較的簡単で、卒業が困難なのがフィリピンの医学部の典型的な特徴です。進級の難易度は、学校によって差が出るので一概に言えませんが、基本的にはどこの医学部を選んでも簡単ではありません。

UERM医学部に関して言うと、学年終了時に全体成績が70%を切っていると、強制退学です。言い換えれば、Major科目を一つ落とし、Minor科目もう一つ落とせば退学になります。Major科目一つのみ落とした場合は、留年が認められます。勿論、進級するには全科目パスする必要があります。毎年450人が入学し、1年生から2年生に進級できるのは360人程です。つまり、最初の1年間で80~90人の学生が留年になるか、若しくは退学になります。5人に4人は進級できると考えると、さして難しくない印象を与えるかもしれませんが、僕は1年間地獄を見ました。

僕が苦労した理由は幾つかあります。1つ目は医学のバックグラウンドがあまり無かったこと。アメリカの大学で1年間解剖学や生理学を学びましたが、日本ではビジネス専攻でした。しかし、クラスメートの大多数はNursing, Medical technology, Pharmacology,Biology等の専攻を4年間修めた後に入学してきます。彼らの中には病院での就労経験もあるような子たちも少なからずおり、医学のバックグラウンドという点で圧倒的な差を埋めなければいけなかったこと。

2つ目は、クラスメートの勉強に対するモチベーションの高さ。クラスメートの殆どは、フィリピンのトップレベルの大学(殆どUPかUST)を優秀な成績で卒業して、医師になる夢を胸に入学してきます。彼らは、僕がテネシー州立大学で一緒に授業を取っていたアメリカ人よりも、ずっと努力家で、語彙力も豊富です。そういう子達ばかりの中で授業を聞いて、試験をパスしていくのは、普通の田舎のアメリカの学部課程を卒業するのと難易度の次元が違いました。

3つ目は、限られた時間と語学の壁です。学期が始まると、授業はとんでもない速度で進んでいきます。Anatomy, Physiology, Biochemistry,この3つのMajor科目の授業は2週間分で、テネシー州立大学の期末試験の量の多さと匹敵するか、それ以上でした。毎月の試験(Long exam)の範囲がアメリカの一般的な大学の学部の1年分の範囲に値すると思います。それだけの量は勿論、優秀な現地の学生でも勉強し切るのは不可能で、限られた時間でどれだけ読んで、覚えられるかという戦いでした。試験前になるとフィリピン人やアメリカ人のクラスメートが2時間で1topic勉強し終わっているのに、自分は半分ちょっとしか終わっておらず、ぞっとする場面がよくありました。

 

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 ピザ屋で午前4時過ぎに2日後に来る解剖学試験の勉強をするクラスメート達(写真)


以上の理由で、かなり苦しみましたが、蓋を開けてみるとなんとか2年生に進級できました。振り返ると、1年の間、学期中は平均睡眠時間は試験の無い週(週末も)で4-5時間で、試験期間中は1週間毎日3時間でした。(試験期間中1週間は他の医学生も3時間くらいでした。)1年間、起きている時間は全て勉強に当てました。さすがに、ここまで馬鹿のように勉強していた学生もいなかったので、450人中でトップ10のスコアを出すことも数回ありました。なので、日本人であっても、英語母語話者じゃなくても、医学のバックグラウンドがさしてなくても、死ぬ思いで毎日勉強すれば進級できると思います。しかし、そのキツさは想像を絶するものでした。日本の大学の授業が下の写真みたいに思えます。


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進級の難易度は学校によって変わります。基本的には毎年発表される国家試験合格率のトップに入る医学部は難しい傾向があります。そういった学校は名誉の為に、卒業生の合格者率を上げる為、カリキュラムを厳しくすることが多いです。さらに、入学試験のNMATの必要点数も、そういった医学部は高めに設定する為、ペーパー試験に強い学生が集まるのも難易度を上げる一つの理由です。また、それとは別に学校の運営方針上、難易度が上がる場合もあります。例えば、UERMは入学試験の基準を高め(cutoff 70)設定して、450人入学させ、最終的には毎年350人程卒業させます。しかし、近くにあるFar Eastern Universityの医学部は入学試験の基準をかなり下げて、取りあえず700人入学させ、200人弱しか卒業させないと聞いています。そういう学校は国家試験合格率が必ずしも高くなくても、校内での競争が激しく、進級の難易度が高くなるので注意が必要です。