フィリピン医学留学Diary

フィリピン医学留学での様々な出来事を綴ります。

最新2016年フィリピン医学部ランキング

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引用 PERFORMANCE OF SCHOOLS: September 2016 Physician Board Exam Results - PRCBoard.com

 2016年度の国家試験合格率ランキングでは、UERM医学部は9位でした。去年の7位からランクを下げたので、学内では少なからず不満の声が挙がっていました。ちなみに、去年1位で今年は3位のフィリピン大学(UP)医学部は、NMAT(入学試験)で99(上位1%)を出し、大学をHonorで卒業するのが入学の最低限の条件のようです。UPのカリキュラムはUERMよりも一段階厳しいとUPに友人が多くいるクラスメートから何度か聞いたことがあります。フィリピン大学をはじめ、毎年トップを張るセブインスティテュート医科大学、サントトマスやアテネオはうちよりもカリキュラムが相当厳しいんだろうと察します。

ランキングの話をしましたが、外国人がフィリピンの医学部を選択する際は、フィリピンでの国家試験を最終的に受験しない場合が多いので、特別このランキングにこだわる必要はないかと思います。特に日本に帰国して臨床する場合、フィリピンの医学部事情など誰も知りません。進級の難易度等や金銭面、卒後にしたいことを考えて、自分のニーズに一番合うと思う学校を選ぶのが賢明だと思います。しかし、国際機関等で世界的に活躍する医師になりたいという場合には、アジアのランキング上位のフィリピン大学(UP)やサントトマス大学(UST)の医学部卒業を狙うのは一つの手かもしれません。

 

フィリピン医学部の進級はどのくらい難しいか

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入学は比較的簡単で、卒業が困難なのがフィリピンの医学部の典型的な特徴です。進級の難易度は、学校によって差が出るので一概に言えませんが、基本的にはどこの医学部を選んでも簡単ではありません。

UERM医学部に関して言うと、学年終了時に全体成績が70%を切っていると、強制退学です。言い換えれば、Major科目を一つ落とし、Minor科目もう一つ落とせば退学になります。Major科目一つのみ落とした場合は、留年が認められます。勿論、進級するには全科目パスする必要があります。毎年450人が入学し、1年生から2年生に進級できるのは360人程です。つまり、最初の1年間で80~90人の学生が留年になるか、若しくは退学になります。5人に4人は進級できると考えると、さして難しくない印象を与えるかもしれませんが、僕は1年間地獄を見ました。

僕が苦労した理由は幾つかあります。1つ目は医学のバックグラウンドがあまり無かったこと。アメリカの大学で1年間解剖学や生理学を学びましたが、日本ではビジネス専攻でした。しかし、クラスメートの大多数はNursing, Medical technology, Pharmacology,Biology等の専攻を4年間修めた後に入学してきます。彼らの中には病院での就労経験もあるような子たちも少なからずおり、医学のバックグラウンドという点で圧倒的な差を埋めなければいけなかったこと。

2つ目は、クラスメートの勉強に対するモチベーションの高さ。クラスメートの殆どは、フィリピンのトップレベルの大学(殆どUPかUST)を優秀な成績で卒業して、医師になる夢を胸に入学してきます。彼らは、僕がテネシー州立大学で一緒に授業を取っていたアメリカ人よりも、ずっと努力家で、語彙力も豊富です。そういう子達ばかりの中で授業を聞いて、試験をパスしていくのは、普通の田舎のアメリカの学部課程を卒業するのと難易度の次元が違いました。

3つ目は、限られた時間と語学の壁です。学期が始まると、授業はとんでもない速度で進んでいきます。Anatomy, Physiology, Biochemistry,この3つのMajor科目の授業は2週間分で、テネシー州立大学の期末試験の量の多さと匹敵するか、それ以上でした。毎月の試験(Long exam)の範囲がアメリカの一般的な大学の学部の1年分の範囲に値すると思います。それだけの量は勿論、優秀な現地の学生でも勉強し切るのは不可能で、限られた時間でどれだけ読んで、覚えられるかという戦いでした。試験前になるとフィリピン人やアメリカ人のクラスメートが2時間で1topic勉強し終わっているのに、自分は半分ちょっとしか終わっておらず、ぞっとする場面がよくありました。

 

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 ピザ屋で午前4時過ぎに2日後に来る解剖学試験の勉強をするクラスメート達(写真)


以上の理由で、かなり苦しみましたが、蓋を開けてみるとなんとか2年生に進級できました。振り返ると、1年の間、学期中は平均睡眠時間は試験の無い週(週末も)で4-5時間で、試験期間中は1週間毎日3時間でした。(試験期間中1週間は他の医学生も3時間くらいでした。)1年間、起きている時間は全て勉強に当てました。さすがに、ここまで馬鹿のように勉強していた学生もいなかったので、450人中でトップ10のスコアを出すことも数回ありました。なので、日本人であっても、英語母語話者じゃなくても、医学のバックグラウンドがさしてなくても、死ぬ思いで毎日勉強すれば進級できると思います。しかし、そのキツさは想像を絶するものでした。日本の大学の授業が下の写真みたいに思えます。


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進級の難易度は学校によって変わります。基本的には毎年発表される国家試験合格率のトップに入る医学部は難しい傾向があります。そういった学校は名誉の為に、卒業生の合格者率を上げる為、カリキュラムを厳しくすることが多いです。さらに、入学試験のNMATの必要点数も、そういった医学部は高めに設定する為、ペーパー試験に強い学生が集まるのも難易度を上げる一つの理由です。また、それとは別に学校の運営方針上、難易度が上がる場合もあります。例えば、UERMは入学試験の基準を高め(cutoff 70)設定して、450人入学させ、最終的には毎年350人程卒業させます。しかし、近くにあるFar Eastern Universityの医学部は入学試験の基準をかなり下げて、取りあえず700人入学させ、200人弱しか卒業させないと聞いています。そういう学校は国家試験合格率が必ずしも高くなくても、校内での競争が激しく、進級の難易度が高くなるので注意が必要です。

フィリピン医学部を卒業して日本で働けるのか

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結論から言うと、可能です。しかし、保障はありません。日本の医学部は入学が困難ですが、一度入学すれば、殆どの学生が卒業して医師になると思います。一方、フィリピンの医学部はその逆です。入学試験はありますが、日本の入試のように難関なものではありません。その代わり、入学後、卒業するまで進級するのが大変です。卒業したら、日本の国家試験もしくは予備試験受験資格の審査を受けます。この審査に通って、日本の国家試験を合格すれば日本で医師として働けます。

正直、この審査にどのくらいの海外医学部卒業者が通るのか、基準は何なのか、といった詳しい事は現時点でわかっていません。あくまでAdmissions officeの方々と話した時の印象ですが、UERM(University of the East Ramon Magsaysay)からは沢山の日本人が卒業したが、少数しか日本の審査で通らなかったというのではなく、卒業まで辿り着けたのが少数しかいなかったのではないかと思っています。

僕が調べた限り、過去にUERM医学部を卒業して日本で3人の方が医師として活躍されています。(面識はありませんが)1人は尼崎で開業されている小川説郎医師。次に、横浜で開業されている明石 恒浩医師。もう一人は、林メリー・ジェーン麻酔科医です。参考までに、下に関連URLを貼っておきます。

 

小川医師 兵庫県尼崎市 総合内科・消化器内科 開業医インタビュー|e-doctor

明石医師 http://www.akahige-taishou.jp/case/book/pdf/book5_id3.pdf

林メリー・ジェーン医師 http://www.ideta.or.jp/patient/dr/dr_hayashi.html

  

1年生授業カリキュラム概要

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1年生の科目は上の写真で記載されている通りです。全部で8科目あります。そのうち、Major科目と言われるものが、通年のAnatomy, Biochemistry, PhysiologyとMinor科目と言われるものが5科目あります。Anatomyは週2-3回の2時間超の授業に加え、人体解剖実験と細胞学実験が週に3回あります。Physiologyは週2回。Biochemistryも週2回の授業で、両科目とも実験が月2回ずつです。これら3つのMajor科目が1年生の全体成績の90%以上を占めるので、1年生はこの3科目に殆どの時間とエネルギーを割いて勉強することになります。毎週Quizが1つまたは2つあり、月に1回は地獄の試験期間が来ます。この試験をLong Examと呼び、1年間でLong Exam1~6までの6つの試験があります。これが全体成績の60%を占めます。このLong Examsが成績の大半を決めるので、学期が始まって間もない時、ある上級生が友人のクラスメートの女性にGet raped, but don't fail the long exams.という至高のアドバイスを送っていたのを今でも鮮明に覚えています。残りのうち、15%は1年間の総まとめのFinal Examinationで、後はクイズ、出席、ディスカッション、レポートで決まります。配点の少ないMinor科目は大して難易度も高くないので説明を省きます。

2枚目の写真に2016-2017年度1年生の後半期カリキュラムを参考までに載せました。ちなみにISPはIndivisual study periodの略で、授業はなしという意味です。

 

クラスメートの外国人比率


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ショッピングモールでカナダ人の友人の誕生日会に集まる外国人留学生と現地学生

これも学校によって全然違います。一応CHED(Commission on Higher Education)のchairmanをしているDr. Reyes 元学長によると各医学部の留学生数に上限が定められているらしく、その上限を超えて外国人を受け入れている医学部が多いと指摘していました。CHEDとして、今後改革を行っていくとの事ですが、いつ改革が実施されるかは不明です。

UERM医学部は毎年外国人留学生の定員が50人です。とは言え、50人も外国人は入学しません。その半分弱くらいです。例年450人入学するので、そう考えると全体比の5%程しかいません。なので、クラスの殆どはフィリピン人が占めます。150人の僕のクラスは僕と3人のアメリカ人だけでした。

構成は、アメリカ人が留学生全体の半分以上を占めます。アメリカで生まれて育ったFilipino American(通称FilAmと呼ばれている)がその大多数。その他はカナダ人がちらほらいるのと、少数のインドネシア人、フィリピンで育ったインド人1人、韓国人1人、台湾人1人を知っています。日本人は今のところ僕1人です。全校生徒1000人はいるので、もう少しいるかと期待していたのですが。。

ということなので、うちは外国人留学生が少ないです。少ないことのデメリットは、外国人に対して特別な処置があったりはしないということ。また、留学生ならではの悩みを共有出来きる人が少ないです。逆に、メリットは珍しいので、みんなから注目を集めてちやほやされます。特にアニメ、漫画の影響で日本が好きな学生が多いのもあり、クラスメートはみんなFriendlyで彼らの助け無しでは1年生パス出来ませんでした。

うち以外にも、マニラの他の医学部には外国人専用のプログラムがあると聞いているので、学校が変わればまた話が違ってくるのを念頭にお読みいただければと思います。

フィリピンの医学部の授業料


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UERM(University of the East Ramon Magsaysay)医学部の2016-2017年度の授業料です。2学期制で写真は1学期分の授業料です。一括で144.825pesos。為替によって変動しますが、この当時は30万円越くらいでした。年間授業料は70万円弱です。これが4年間です。この額は、フィリピンの医学部の中ではかなり高めで、この半額程の医学部もあると聞いています。基本的にはマニラにある医学部は授業料が高い傾向にあるようなので、セブやミンダナオ等の医学部はこれよりずっと授業料が安くなるようです。

 

これに加えて、留学生は上記の授業料に加えて、入学金を1万ドル払いました。マニラの医学部の大多数はこの留学生に入学金を課していると聞いていますが、額は学校によって違っているようで、同じマニラでもこの半額程の学校もあると聞いています。

フィリピン医学留学に必要な英語力

   
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フィリピンの医学部に留学する際、一体どのくらいの英語力が求められるのかは留学を考える日本人の疑問の一つだと思います。

結論から言うと、フィリピンには医学部が50校程あり、それぞれ授業の進め方、進級の難易度等変わってくるので一概には言えません。では、英語がネイティブでなければいけないか?というと、そんなことはありません。英語がネイティブでない外国人(少数の日本人を含む)は沢山医学部で勉強しています。僕も帰国子女ではなく日本で20歳まで育ちました。

在籍しているUniversity of the East Ramon Magsaysay医学部はそういう意味では非英語圏の外国人が想像以上に少なく、残念に思っています。1年生は450人いましたが、その中で英語母語話者ではなかったのは、僕だけです。もしかしたら、もう1人や2人いたかもしれませんが、出会うことはありませんでした。一つ上の学年では、フィリピンに7年ほど住んでいる韓国人の女の子が一人と、アメリカの大学を卒業した台湾人を知っています。その他、大多数のフィリピン人とアメリカ人。授業は英語母語話者を基準に進められるので、英語に大きな問題があると卒業は難しいと思います。

参考までに自分の話をすると、僕は5年前に1年間必死で詰め込んで、TOEFL ibt で69を取り、テネシー大学に生物学専攻で留学しました。当時は英語は殆ど話せませんし、聞き取れませんでした。1年間英語で解剖学や生理学、分子生物学の授業を取り、帰国後のTOEICの点数は970点くらいだったと思います。その後は、京都の大学で留学生と一緒に受ける授業を取りながら、自分で数年独学しました。結局、海外に住んでいた期間は帰国子女のように長くないので、今でも発音は日本訛りがありますし、もっと上手く話せて、書けたらずっと楽だろうなと思う場面が多いです。最近はこれといった英語試験は受けていないので、自分の英語力を数値化できませんが、何も勉強せずに今TOEFLibtを受けたら90点台(多分100超えない)だと思います。

医学部で圧倒的に求められるのは、読解力です。大量の情報を限られた時間で読み込み→暗記→試験の繰り返し。英検1級の長文の問題やTOEFLの長文は最低読んで、難なく理解できるくらいの読解力がないと厳しいと思います。

語彙力に関しては、読解力ほど求められません。読むのは医学の教科書なので、わかりやすく説明されている文章が多いからです。僕は未だに小説を英語で読むのに苦労しています。なので、読解力と違って、英検1級に出題されるような難解な語彙がわからなくても大丈夫。

リスニングに関しては、最悪授業がところどころ聞き取れなくても、授業ごとの要約がドキュメントとして上がるので、それを読めば問題ありません。月に2回程度小グループで3時間ほどのディスカッションの試験があります。それは、配点は少なく、厳しくはありませんが、周りの学生が言ってることを理解しないと議論に参加できません。

スピーキングは、ディスカッションで話さなければいけません。結構苦労してました。日常会話はべつに困らなくても、聞き慣れずよくわかっていない医学の概念の説明を急に求められると話は違います。そういう時は支離滅裂な英語で必死で説明していました。まあでも、自分で挙手して発言することの方がずっと多いので、挙手する前に自分の中で整理して説明して逃げ切った感があります。

ラィティングは、試験は4択のマークシートなので、文章が流暢にすらすら書けなくても大丈夫です。稀にレポート課題がありますが、それも一回で3ページとか4ページの短いものが多いので、問題ありません。

 

*最後に、上記はあくまでもうちの医学部の授業を基に考えたので、他にもっと外国人の多い医学部だと、話は全然違うと思います。