フィリピン医学留学Diary

フィリピン医学留学での様々な出来事を綴ります。

NMAT体験談と対策

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 NMAT試験会場 San Calros Universityでの受験直前の様子(写真)

NMAT受験日2015年10月25日  

受験地 CEBU SAN CARLOS UNIVERSITY 

受験直後に書いた体験談を下に貼り付けるので、参考にしてください。

 

NMAT受験を決めたのは受験日の2か月前で、セブの医学部を卒業された森一仁先生に「2か月間気合い入れて、詰め込めば何とかなる」と強く励まされて受験したのを覚えています。森先生おすすめの教科書をamazonで買い揃え、日本でバイトと学校の授業と並行しながら1日3-5時間NMATの勉強をしました。

まずはBiologyの勉強から始め、CliffsnoteのBiology を第一章から一言一句逃さず読み漁りました。幸いアメリカの大学課程で2semestersの間Biology関係のクラスを受講していたので、前半のcell biology, mitosis, meiosis, geneticsは比較的抵抗がなく進めました。とはいえ、アメリカにいたのが2年以上前だったので、忘れているところが殆どで、結局全部一から覚え直しの感じでした。前半の章はわからない単語があればdefinitionを一つ一つネットで調べて理解し、4度は読み直しました。その後、森先生のアドバイス通り、覚えたところは黒マジックで×を付けて、×がついていない箇所を徹底的に暗記しました。振り返れば、試験の不安で自分の得意な箇所ばかりを勉強したくなる衝動がこの方法で抑えられて良かったです。一番苦労したのはtaxonomyの章の聞き慣れないfungusやmoneraの名前、photosynthesisやcell respirationを覚えることでした。結局、Taxonomyに関しては試験当日も半分くらいしか暗記していない状態で臨みましたが、幸い試験には殆ど出てきませんでした。勉強をしている中で、医学部の受験なのにcliffsnoteはあまりにも薄すぎないかという不安が生まれ、一応Barronsの分厚い教科書も途中で買い、途中まで読み進めましたが、途中で挫折。受験後振り返ってみて、BarronsはNMATにはあまり意味が無かったように思います。そんなこんなで、気づいたら受験当日となり、結局薄っぺらいcliffsしか勉強してないことを後悔しました。受験してみると、Cliffsの内容よりも少しばかり難しめの問題や見たことのない単語が結構ありましたが、問題をよく読むとCliffsに書いてあった基本的なことを聞いている問題が多く、選択肢であったことにも助けられ、想像以上に解けました。例外はanatomyとphysiologyでした。思ったより多く出題され、Cliffsの内容では足りず正答できなかったように思います。しかし、結果としてほぼcliffs暗記だけで800点中775点まで取ることができました。

もし今もう一度勉強するなら、BIOLOGYに関しては

・Cliffs Quick Reviewを完璧に丸暗記する。どうしても時間がなければtaxonomyはskipしても構わない。

・Cliffs Quick Review Anatomy& Physiologyの最初の幾つかの章を覚えておく。特にhormone, bone, muscleのpartを重点的に。

かなりBIOLOGYだけで書きましたが、BIOLOGYだけで1か月以上使ってしまいました。

CHEMISTRYは1か月くらい前からBIOLOGYと同じようにcliffsnoteを読みました。高校以来の化学で、大学受験を受けていないので、殆どわからない状態でした。Cliffsnoteの説明で基本的な概念を理解し、barronsのEZ-101が分かり易く要約されていたのでそれを丸暗記するようにしました。結局時間がなく、electrochemistryやacid-baseはノータッチで受験。最初の半分はcliffsからそのまま問題を作ったのではないかと思われるくらい同じで助かりました。後半の途中からacid-base, electrochemistryの計算問題,biochemistryの問題が出てきて、まったくお手上げになり適当に塗りつぶしました。結果590でした。振り返って、cliifsnoteとEZ101を最後らの方の章もしっかりやり込んでいたら、それだけで十分な点数が出たと思います。

Chemistryと同時並行して、CliffsのPsychologyも進めました。心理学は比較的好きな科目で、日本の大学でも授業で学んでいたこともあり、趣味の感覚で読み進めました。黒マジックで×を付けるような時間はありませんでしたが、大事そうなところだけを2度読み返しました。暗記はできませんでした。Psychoanalysisの章と他幾つかの章は時間がなく、ノータッチ。生憎、sociologyやanthropologyもまったく手を付けられませんでした。が、いざ受験してみるとNMATのsocial science sectionではpsychologyも含めて、就活の時事問題、一般常識みたいな問題が多いため、このsectionの準備にあまり時間をかけなくて良かったと思います。もしかすると、文系の学部で勉強してきたからそう感じたのかもしれません。結果は644でした。 

最後にverbal  sectionの対策として、Word Power Made Easyを7割くらい読み、暗記できることを祈って読みました。振り返って、Verbal sectionでWord Power Made Easyは役立ったなと特に感じませんでした。(語彙の勉強としてはかなりの良書です。)Verbal sectionに関しては、短期間の詰め込みでどうにかなるものではないと感じました。academic関連の固い語彙力を問われ、長文の内容の理解を問う問題が出てきます。個人的には、語彙のpartは正答率6割くらい。長文のpartでは8-9割解けたと思い、それなりに自信があったのですが、結果は487でした。平均より少し低かったのを見ると、おそらくフィリピン人の受験者はnative English speakerみたいなものだと思うので、彼らは殆ど正答しているかと思います。

その他のことをする時間はありませんでした。結構2か月間で詰め込んで勉強したなとは思いますが、物理学ノータッチ(高校2年生で学んだ以来)、化学が中途半端、NMAT REVIEWER の問題ですら目を通す時間がなかったことなどもう少し勉強したかったなと思います。しかし、結果としてはpercentile80を超すことができました。

Verbal sectionに関しては、しっかり地道に勉強をしないと点数を上げるのが難しいなと感じます。しかし、Science sectionに関してはNMATでは2-3か月cliffsnoteでしっかり詰め込めば、僕のような大学受験をしたことがない文系の学生でも勝負できるとわかりました。今後NMAT受験される方に少しでも参考になれば幸いです。 

 

以下、使用教材

Cliffs Quick Review –Biology-

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おすすめ度★★★★★

http://www.amazon.co.jp/CliffsQuickReview-Biology-Kelly-Schweitzer/dp/0764563750/ref=sr_1_7?ie=UTF8&qid=1452895541&sr=8-7&keywords=cliffs+biology

 

BARRONS E-Z BIOLOGY

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おすすめ度★★

http://www.amazon.co.jp/Barrons-E-Z-Biology-Gabrielle-Edwards/dp/0764141341/ref=sr_1_8?ie=UTF8&qid=1452895857&sr=8-8&keywords=barrons+biology

 

Cliffs Quick Review – Chemistry-

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おすすめ度★★★★★

http://www.amazon.co.jp/CliffsNotes-Chemistry-Quick-Review-Cliffsquickreview/dp/0470905433/ref=sr_1_4?ie=UTF8&qid=1452895703&sr=8-4&keywords=cliffs+chemistry

 

 

BARRONS EZ-101 Chemistry

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おすすめ度★★★★★

http://www.amazon.co.jp/Chemistry-Barrons-Ez-101-Study-Keys/dp/0764120069/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1452896416&sr=8-2&keywords=ez+chemistry

 

Cliffs Quick Review –Psychology-

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おすすめ度★★★

http://www.amazon.com/Psychology-Cliffs-Quick-Review-Sonderegger/dp/0822053276/ref=sr_1_sc_1?ie=UTF8&qid=1452896259&sr=8-1-spell&keywords=cliifs+psyhoology

 

フィリピン医学部入学までの手続き

フィリピン医学部の入学絶対条件は、学士号を持っていること。文系の学士号でも構わない学校が多いです。二つ目はNMAT(National Medical Admission Test)の試験の点数。この足切りの点数は学校によって変わります。受ければそれでいいというような医学部から、90%以上が絶対条件のフィリピン大学やアテネオデマニラ大学まで、それぞれの学校が基準を定めています。

 

大まかな手続きは

 

NMAT受験

出願

面接(UERMは現地面接必須ですが、SKYPEで対応してくれる学校も多いようです。)

合否発表

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といった流れです。

 

出願は必要な書類を集めるのが少々面倒ですが、学校側から要求される書類を提出すれば終わりです。また、万が一書類の提出が期限より遅れても、なんとでもなるのがフィリピンです。これはあくまでも印象ですが、出願期限が万が一過ぎていても、授業開始日前に提出すれば入学できそうです。面接は、外国人留学生の場合、あくまでも名目上で、落とされることは滅多にないと思うので割愛します。一番時間がかかるのはNMAT受験です。日本の入試やアメリカのMCATと比べると、簡単だと思います。また、TOEICのように何度も受験可能で気もかなり楽です。とはいえ、アメリカの大学1,2年次に履修する教養レベルの生物学、化学、数学、物理学、心理学、社会学、Verbal reasoning等と科目が多いので、ある程度の準備が必要になります。NMAT対策に関しては、また別の記事で詳しく書きます。

 

マニラの治安

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マニラはフィリピンの中でも、経済格差が広く、治安が悪い地域として知られています。フィリピンの田舎は、自然豊かで牛が道路に歩いているようなのどかなイメージを僕は持っていますが、マニラはそれとは対照的に殺伐とした都会です。マニラに住んで最初に驚いたのが、想像以上に都市開発が進んでいたこと。そこいらに巨大ショッピングモールが乱立し、高層マンションが立ち並んでいます。利便性でいうと、大阪よりもいいのではないかと思うくらいコンビニもレストランも揃っています。

都市の発展の一方で、地方から上京し、仕事に就けない貧困層が多く、ストリートチルドレンや売春婦が道に溢れている地区も少なくありません。また、タクシーの運転手がぼったくってきたり、理不尽に怒ったりということも少なくありません。というと危険な印象を持たれると思いますが、治安の悪さはスラム地区や歓楽街に集中している傾向があります。格差社会の顕著なマニラでは、そういった貧困層の一方で、億万長者も結構います。医学部でクラスメートになる子たちにはそういった子が特に多いです。彼らは、当たり前のようにMacを使い、スタバに頻繁に出入りし、海外旅行に行きます。彼らの生活圏内を普通に生活していれば、危ないと感じることはないと思います。
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夜11時頃の学校の近くのstarbucks。試験期間が近づくと、勉強する学生たちで埋まります。

UERMの周りには、日本で言ういわゆる高級マンションが立ち並んでいて、医学生の多くがそこで住んでいます。40階を超えるようなマンションにはプールやスカイラウンジ、高級感を漂わせる受付、周りにはガードマンが沢山います。僕もそのうちの一つに住んでいますが、レストランもスーパーもスタバも高級マンションの下に入っているし、学校まで歩いて1分もかからないので、アメリカにいるのと変わらないなと感じることがあります。学校の真横には警察署と日本人が経営する居酒屋があり、夜12時以降に歩いても、治安が悪いと思ったことはありません。
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多くの学生たちが住む学校横のコンドミニアム
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↑僕が住んでいるコンドミニアムのプール。学期中は泳ぐ時間はありませんでした。
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うちのコンドミニアムのフロント。(写真)友人でも入口で名前を書かなければ入れません。こういったプール付きの高級マンションでも、部屋は狭いですが、家賃は9000pesos(2万円程)とお得感があります。

しかし、これはあくまで個人の印象に過ぎないので、もしかしたら僕とクラスメートたちが1年間超幸運だったという可能性があるかもしれません。政府の統計を基にもう少し客観的に説明すると、日本人は毎年フィリピン全土で平均4人殺害されているようです。これを殺人発生率で表すと日本にいる日本人より高いことになります。しかし、日本人が殺害される大多数のケースはフィリピン人ではなく、他の日本人とのトラブルで起きるようです。また、殺害される日本人には共通の特徴が見られるようで、以下がそうです。

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ということなので、留学生が殺害される確率は極めて低く、日本人留学生が殺害された前例はこれまでありません。

僕の実感的にも、統計的にも圧倒的に多いのはスリ。携帯をすられたクラスメートを数人知っていますし、特に観光地に行くと外国人を狙ったプロのスリが無数にいるので、常に気を張らなければいけませんでした。これには普段から注意が必要です。


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↑スリが特に多いマーケット。基本買い物はショッピングモールなので、まだ行ったことはありません。

参照URL フィリピンの治安|フィリピン留学情報

 

1年生を終えてUERM医学部の感想

この1年を振り返って、UERM(University of the East Ramon Magsaysay Memorial Medical Center)を選んで良かったなと思うこととそうではない事があります。

まず良かったと思うことは、勉強環境が整っていること。残念ですが、フィリピンの医学部にはカンニングが頻繁に起こったり、教授が遅刻してきたり、不公平な成績をつける教授もいると聞いています。また、過去問を巡る政治的な争いで点数が決まるようなこともあるようです。その点、UERMは、カンニングは1年間で聞いたことがありませんし、採点はマークシートで機械が行うので不公平になる要素がありません。そして、教授は生徒のアンケートで講義の質が評価されるため、教授が授業に遅刻するなど滅多になく、指導熱心な教授が殆どです。過去問に関しても、Google Driveで全学生で共有するので、情報の格差で成績が決まることもありません。その点、フェアで努力が認められる学校です。


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2つ目はTransの存在です。Transとはクラス全体で協力して作る授業ごとの要約です。1クラス20グループに分かれ、月に1回自分のグループの担当が来ると、担当の講義を録音したり、写真を取ったり、授業要約を作ります。これが全生徒に共有されるので、いちいち教科書で勉強する箇所を探してという面倒な作業が省けます。また、授業で理解できなかった場所を後で全て確認できます。基本的にはこのTransをしっかり覚えさえすればパスできるので、この制度に本当に助かっています。

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3つ目は生徒の質が高いこと。現地生は倍率7の入学審査を通ってきているので、優秀な学生が多いです。クラスメートの3割は国立1位のフィリピン大学、半分は私立名門のサントトマス大学を卒業しています。友人には、フィリピン大学を主席で卒業したり、Magna cum ludeで卒業した生徒が結構普通にいます。また、カリフォルニアの大学を主席で卒業してきたアメリカ人の女の子や、カリフォルニア大学デーヴィス校のGeneticsのリサーチアシスタントをしていた台湾人をはじめ、現地生、留学生共に勉強熱心で努力家が多いです。
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4つ目はUERMのフィリピンでの評判が良く、アメリカとの繋がりが強い数少ない医学部であること。現在政府機関であるCHEDにより、医学部評価の最高ランクであるcenter of excellenceに選定されているのは3校のみです。フィリピン大学、サントトマス大学、そしてUERMです。またPASCUと呼ばれる別の機関にも最高ランクのLevel4を維持しています。これは国家試験の合格率ランキングだけではなく、様々な要素を考慮して評価されたものです。二つ目に、アメリカとコメクションが強い学校です。4年次にはシカゴ、ニューヨークの病院で短期研修できます。現在アメリカで卒業生が2000人以上働いていており、卒業生でニューヨークで開業されている医師が講演しに来たこともありました。                         
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次に悪かったなと思うのは、進級が想像以上に難しかったこと。正直他の医学部で勉強したわけではないので、他と比べてどのくらい難しいかはわかりません。しかし、現地学生によると、UERMはフィリピン大学やファーイースタン大学よりは進級が簡単のようですが、フィリピン全体で見たら難しい部類に入るようです。また、落第した生徒に補修や再試験がない制度もその難易度を助長していると思います。5人に1人は2年生に進級できず、その中には外国人留学生もいます。そのうち、1人はフロリダから来たアメリカ人の友人で、他にもカナダ人で留年している学生を知っています。
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2つ目は授業料が高い。授業料の詳細は別の記事で載せたのでここでは触れませんが、UERMの授業はマニラの医学部の中でも一番高い部類に入ると思います。また、留学生が払わなければならない入学金が1万ドルで、これも高く設定されています。他に医学部で半額ほどの入学金の学校も知っていますし、そもそも入学金がない学校もあります。そう考えると、授業料が高めです。   

最後は外国人が少なすぎること。日本人は学校全体で僕一人しかいません。また、殆どの外国人はアメリカ人のため、もう少し日本や韓国等の文化的にも近く、自分と同じ境遇の留学生の仲間がいれば良かったのにと幾度となく思いました。

 

 

 

フィリピンの医学部を卒業してアメリカで働けるのか

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渡米したい場合は、フィリピンから卒業後直接渡米するか、日本で働いてから渡米するかだと思います。後者に関しては、可能だと思います。しかし、前者は難しいんじゃないかというのが僕の現時点での理解です。そもそも法律上の問題で不可能ではないかという指摘もあります。)

アメリカで医師として働く場合、アメリカの医師国家試験USMLEを取得し、現地のResidency Programに応募し、選定されるのが一般的な方法になります。USMLEに関してはフィリピンの医学部を卒業して受験可能です。UERMでは、入学式で2023年問題の基準はクリアしているため安心してほしいと学長から話がありました。しかし、問題はResidency Programです。アメリカの永住権が無い日本人の場合、まずVISAが一つの壁になります。基本的には、現地の医学部を卒業したアメリカ人と外国語医学部を卒業したアメリカ人が優遇されるのが一般的だからです。とは言え、アメリカの医師の4人に1人は外国人です。あなたが優秀であれば、外国人でも喜んで受け入れます。問題はフィリピン医学部を卒業した直後では、その優秀さを証明する機会がUSMLEのスコアくらいしかありません。USMLEのスコアで高得点を取得しなければ基本的には外国人のResidency Programの扉は開かれません。これをChallengingと捉えるかimpossibleと捉えるかは人によります。

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フィリピンの医学部を卒業された太田医師のオフィシャルウェブサイトに、太田医師ご自身が渡米に挑戦された時のお話が書かれていますので、参考にして下さい。(http://yota.justhpbs.jp/sub2.html

しかし、特殊な能力を持っていたり、アメリカの大学院を卒業している、また現地でコネクションがある場合は必ずしもこの限りではないようです。また、アメリカでの臨床を狙っている韓国人やカナダ人の友人が学校にいるので、彼らがどうやって実現させるのか注目しています。

 

最新2016年フィリピン医学部ランキング

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引用 PERFORMANCE OF SCHOOLS: September 2016 Physician Board Exam Results - PRCBoard.com

 2016年度の国家試験合格率ランキングでは、UERM医学部は9位でした。去年の7位からランクを下げたので、学内では少なからず不満の声が挙がっていました。ちなみに、去年1位で今年は3位のフィリピン大学(UP)医学部は、NMAT(入学試験)で99(上位1%)を出し、大学をHonorで卒業するのが入学の最低限の条件のようです。UPのカリキュラムはUERMよりも一段階厳しいとUPに友人が多くいるクラスメートから何度か聞いたことがあります。フィリピン大学をはじめ、毎年トップを張るセブインスティテュート医科大学、サントトマスやアテネオはうちよりもカリキュラムが相当厳しいんだろうと察します。

ランキングの話をしましたが、外国人がフィリピンの医学部を選択する際は、フィリピンでの国家試験を最終的に受験しない場合が多いので、特別このランキングにこだわる必要はないかと思います。特に日本に帰国して臨床する場合、フィリピンの医学部事情など誰も知りません。進級の難易度等や金銭面、卒後にしたいことを考えて、自分のニーズに一番合うと思う学校を選ぶのが賢明だと思います。しかし、国際機関等で世界的に活躍する医師になりたいという場合には、アジアのランキング上位のフィリピン大学(UP)やサントトマス大学(UST)の医学部卒業を狙うのは一つの手かもしれません。

 

フィリピン医学部の進級はどのくらい難しいか

                        「med school memes study」の画像検索結果

入学は比較的簡単で、卒業が困難なのがフィリピンの医学部の典型的な特徴です。進級の難易度は、学校によって差が出るので一概に言えませんが、基本的にはどこの医学部を選んでも簡単ではありません。

UERM医学部に関して言うと、学年終了時に全体成績が70%を切っていると、強制退学です。言い換えれば、Major科目を一つ落とし、Minor科目もう一つ落とせば退学になります。Major科目一つのみ落とした場合は、留年が認められます。勿論、進級するには全科目パスする必要があります。毎年450人が入学し、1年生から2年生に進級できるのは360人程です。つまり、最初の1年間で80~90人の学生が留年になるか、若しくは退学になります。5人に4人は進級できると考えると、さして難しくない印象を与えるかもしれませんが、僕は1年間地獄を見ました。

僕が苦労した理由は幾つかあります。1つ目は医学のバックグラウンドがあまり無かったこと。アメリカの大学で1年間解剖学や生理学を学びましたが、日本ではビジネス専攻でした。しかし、クラスメートの大多数はNursing, Medical technology, Pharmacology,Biology等の専攻を4年間修めた後に入学してきます。彼らの中には病院での就労経験もあるような子たちも少なからずおり、医学のバックグラウンドという点で圧倒的な差を埋めなければいけなかったこと。

2つ目は、クラスメートの勉強に対するモチベーションの高さ。クラスメートの殆どは、フィリピンのトップレベルの大学(殆どUPかUST)を優秀な成績で卒業して、医師になる夢を胸に入学してきます。彼らは、僕がテネシー州立大学で一緒に授業を取っていたアメリカ人よりも、ずっと努力家で、語彙力も豊富です。そういう子達ばかりの中で授業を聞いて、試験をパスしていくのは、普通の田舎のアメリカの学部課程を卒業するのと難易度の次元が違いました。

3つ目は、限られた時間と語学の壁です。学期が始まると、授業はとんでもない速度で進んでいきます。Anatomy, Physiology, Biochemistry,この3つのMajor科目の授業は2週間分で、テネシー州立大学の期末試験の量の多さと匹敵するか、それ以上でした。毎月の試験(Long exam)の範囲がアメリカの一般的な大学の学部の1年分の範囲に値すると思います。それだけの量は勿論、優秀な現地の学生でも勉強し切るのは不可能で、限られた時間でどれだけ読んで、覚えられるかという戦いでした。試験前になるとフィリピン人やアメリカ人のクラスメートが2時間で1topic勉強し終わっているのに、自分は半分ちょっとしか終わっておらず、ぞっとする場面がよくありました。

 

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 ピザ屋で午前4時過ぎに2日後に来る解剖学試験の勉強をするクラスメート達(写真)


以上の理由で、かなり苦しみましたが、蓋を開けてみるとなんとか2年生に進級できました。振り返ると、1年の間、学期中は平均睡眠時間は試験の無い週(週末も)で4-5時間で、試験期間中は1週間毎日3時間でした。(試験期間中1週間は他の医学生も3時間くらいでした。)1年間、起きている時間は全て勉強に当てました。さすがに、ここまで馬鹿のように勉強していた学生もいなかったので、450人中でトップ10のスコアを出すことも数回ありました。なので、日本人であっても、英語母語話者じゃなくても、医学のバックグラウンドがさしてなくても、死ぬ思いで毎日勉強すれば進級できると思います。しかし、そのキツさは想像を絶するものでした。日本の大学の授業が下の写真みたいに思えます。


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進級の難易度は学校によって変わります。基本的には毎年発表される国家試験合格率のトップに入る医学部は難しい傾向があります。そういった学校は名誉の為に、卒業生の合格者率を上げる為、カリキュラムを厳しくすることが多いです。さらに、入学試験のNMATの必要点数も、そういった医学部は高めに設定する為、ペーパー試験に強い学生が集まるのも難易度を上げる一つの理由です。また、それとは別に学校の運営方針上、難易度が上がる場合もあります。例えば、UERMは入学試験の基準を高め(cutoff 70)設定して、450人入学させ、最終的には毎年350人程卒業させます。しかし、近くにあるFar Eastern Universityの医学部は入学試験の基準をかなり下げて、取りあえず700人入学させ、200人弱しか卒業させないと聞いています。そういう学校は国家試験合格率が必ずしも高くなくても、校内での競争が激しく、進級の難易度が高くなるので注意が必要です。